「アフターデジタル」というコンセプト

アフターデジタルとは?

こちら"ビービット"というコンサルティング会社の藤井保文さんのインタビュー記事(下記)や「アフターデジタル2・UXと自由(日経BP)」という著書の中でお話されている内容です。

 

thebridge.jp

 

中国だと腾讯のWeChat(微信)や阿里巴巴のAlipay(支付宝)等といった、中国人の大半がスマホにダウンロードして活用している代表格のAPPで、その使用履歴・データから利用者の行動態様を窺い知れる・予測しうるという形になっています。

ここから、各個人の過去の行動(購買や移動など)のデータを踏まえた、その時点での最適なレコメンドが出る仕組みが出来上がる。また、各利用者の移動データをビッグデータとして収集・解析すると、交通移動ニーズの割り出しや渋滞情報などがすぐにわかるという形ですね。

利用者個人にとってみれば、APP上での活用履歴を踏まえて、よく使う・よく選択するものをリコメンドしてくれるので、わざわざ自分で選び出す手間も省けるし、より良い内容を提供してくれるのであれば、今までになかった体験価値を得られるメリットもあり。

 

このように、スマホという現代ではほぼ誰しもが持っている端末を通じて、オンラインに接続し、必要な情報を企業が収集→利用者や企業(場合によっては交通などのインフラ)にもフィードバックされていく世界が「アフターデジタル」の状態だと理解しています。

 

「アフターデジタル」下で求められる

上記の様に、利用者の行動データが企業にダイレクトに届いて収集でき、それを元に利用者にオンライン(スマホ上でのSMSなど)やオフライン(実際のサービス)にフィードバック出来るようになる。

→ 要は、常に企業が利用者と繋がっていられるんですよね。

以前の「オンラインでつながっていない」状況だと、企業も顧客のニーズや好みを定点的なデータを踏まえて分析して見込んでいくしかなかったけれども、「常に繋がっている」ことで行動・状況もすぐにわかるし、情報量が多いのでニーズも読みやすい。

なにより、フィードバックが素早くできるという点がメリット。

 

と、こういう世界観の中だと、今まで「商品の機能性を訴求して売っていた」という状況から「顧客の求める価値」(User Experience:UX)がより重要になるよね。っていう話。

今まで顧客の求める価値は即時取りにくいので、定点的に判断して商品に反映してきた機能を訴求して売るのではなく、「その時その時の顧客の求める価値に適時に提供できるかどうか」が商品・サービスに求められてくるという事。

市場調査→商品/製品企画→開発→生産→販売→アフターサービス、のサイクルがとにかく早くなっているということですよね。

 

また、利用者からのデータを掴むためのAPPやフィードバック・システムを構築するために、Digital Transformation(DX*)を行っていくが、このDXもUX起点でないと意味がないよねっていう事になります(*因みにDigital Transformationを意味する際のDXの"X"は、Change(何かに変わる)という意味で、Xの文字が使われます)

 

「ユーザーに還元しないのは不義理ではないか?」

藤井さんが中国企業の方にインタビューされた際の返答とのことですが、

 

ユーザーに関する情報をユーザーの利益に活用・還元しない(自社の利益だけに使う)のは、ユーザーに不義理ではないか?

 

ユーザーに価値還元して、ユーザーからのロイヤリティを高め続ける、という事が重要。さらに言うと社会への還元が必要。社会システムや市民に対する利便性への還元が重要。社会的責任でもある。 

 (引用:アフターデジタル2・UXと自由(日経BP)

 

これは正であり、真かと。

特に、「社会への還元が必要」という点においては、これまで官が中心となって進めていた社会インフラ(行動体系・支払システム)について、民間企業が構築を担うことができる様になっているということですね。

 

アフターデジタルの先は?

アフターデジタル下では、これまでの「O2O*」から今後はOMO(Online merges with Offline)、すなわち、オンラインベースでもオフラインベースでも変わらない顧客体験を提供するという事に切り替わっていくということが、ビービット藤井さんは言われていますが、オンライン・オフライン何れでも変わらない顧客体験を提供しうるのか?これは提供する商品(モノ)・サービスによる気もします。
*O2Oマーケティング:これまではOnline(スマホ・PCなど)の端末ベースで情報提供をし、その結果、オフライン(現場)に誘導するマーケティング

 

これまでオフラインにわざわざ足を運ぶ、という理由に関しては、実際現地に行かないとものの購入が出来なかったという点はありますが、実際に実物を購入する以外に、購入前に実物自体を実際に見てみる・説明を受けるという事がユーザーとして受けられていた体験価値であるはず。

→ 実物自体に関する直接的な確認を取れていたことが、現場(オフライン)に実際に足を運んで確認することで一定のメリットはあったと思うんですよね。

・外観:実物のものの外観を見れる

・機能性:実物の機能性を試すことが出来る 

・販売場所での販売員からの商品説明(不明点があれば、適宜質問に応じてくれる等)

※現状ではネット上での説明サイトも多い為、そこまで影響はなさそう

 

現状だとオンライン上で現物に関する情報はある程度あるものの(大きさ・色合い・使った際の使用感レビュー等)、実際の使用感や感触などは、現物を触るまでは正直わからず、この点は実際に販売店訪問した方が購入の際にしっかり確認は出来そう。

 

アフターデジタル下でのOMOに関しては、具体的なモノである商品ではなく、いわゆるサービスに関してはすんなり受け入れらやすそうな気はします。

例えば、保険加入等、保険に関する説明を対面で受けていた所からZoomなどオンラインで受けられる様になる事。オンライン上で事前説明を受け、必要な入会手続を行い、サービス契約をする、という形であれば特に問題なく、加入は可能かと。

 

一方で、具体的なモノ(商品)となると、実際にユーザーの好みや実生活で活用する際にその人にピッタリマッチするかどうかは不明な部分は残りそう(例えば、服であれば試着する、携帯電話等の電化品も実際の解像度に応じて異なる)

 

この辺りはVRVirtual Reality)もしくはAR(Augumented Reality)がより進化・発展すると、よりOMOのコンセプトが進んでくる可能性もありそうです。

 

何れにせよ、技術進歩の度合が進むほどオンラインとオフラインに完全に境目がなくなっていく形になっていく事は間違いなさそう。

 

アフターデジタル以降の動き・進展については今後も要チェックです。